睡眠時無呼吸症候群(SAS)
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)は、睡眠中に呼吸が何度も止まってしまう病気です。特に多いのは、空気の通り道である上気道(のど)が塞がることで呼吸が止まる「閉塞型睡眠時無呼吸(OSA)」です。10秒以上の呼吸停止が、一晩に何度も起きてしまうのが特徴です。
睡眠の質が著しく低下するため、日中の強い眠気や集中力の低下を引き起こすほか、高血圧・心疾患・脳卒中・糖尿病といった生活習慣病のリスクが高まります。放置すると命に関わる合併症につながることもあります。
私たちのクリニックでは、ご自宅で行える簡易検査キットを検査会社と連携してお送りし、検査後は当院にて結果を評価し、必要であればCPAP治療へつなげる体制を整えています。
睡眠時無呼吸症候群の症状について
次のような症状がある場合、SASが疑われます。
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大きないびきをかく(家族に指摘されることが多いです)
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寝ている間に呼吸が止まっていると指摘される
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日中に強い眠気がある(会議中や運転中にも眠ってしまう)
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朝起きたときに頭痛がある
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何時間寝ても疲れが取れない
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夜中に何度も目が覚める、トイレに起きる
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性格の変化(イライラ、不安感)
ご本人は無自覚のことも多く、ご家族の声で受診につながるケースもあります。特に「いびき+日中の眠気」の組み合わせは要注意です。
睡眠時無呼吸症候群の原因について
主な原因は次の通りです。
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肥満・・首まわりの脂肪が気道を圧迫しやすくなります
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あごが小さい・首が太い・・構造的に気道が狭くなる要因です
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加齢・筋力低下・・のどの筋肉の緩みにより、気道が塞がれやすくなります
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飲酒・睡眠薬の使用・・筋肉が弛緩し、気道閉塞を助長します
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鼻づまりやアレルギー性鼻炎・・鼻呼吸の障害が無呼吸を引き起こすことがあります
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遺伝的要因・・家族にもSASの方がいる場合は注意が必要です
現代では、肥満や生活習慣の変化が大きく影響しており、中高年男性に多いとされていますが、痩せた方や女性でも発症することがあります。
睡眠時無呼吸症候群の検査方法について
当院では以下のような流れで、検査・診断を行っております。
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問診・症状の確認
いびき・眠気・起床時の状態などを確認します。 -
ご自宅での簡易検査(PG検査)
専用の検査機器をご自宅へ配送し、一晩装着して眠るだけの簡単な検査です。
鼻の呼吸や胸の動き、酸素飽和度などを計測します。 -
当院での結果判定・説明
検査終了後、装置を返送いただきます。私たちがデータを評価し、必要であれば精密検査や治療につなげます。 -
必要に応じて精密検査(PSG検査)へ
重症度が高い、または他の疾患との鑑別が必要な場合には、連携施設での一泊入院検査をご案内します。
睡眠時無呼吸症候群の治療法について
治療方法は症状や重症度に応じて異なります。
CPAP(シーパップ)療法
もっとも広く使われている治療法で、睡眠中に鼻に装着したマスクから空気を送り続けることで、気道の閉塞を防ぎ、無呼吸を防ぐ方法です。
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重症度が高い方や、日中の眠気が強い方に特に有効です
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装着は初めこそ違和感がありますが、慣れると朝の目覚めが劇的に変わる方が多くいます
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当院では、CPAP療法導入後の定期的な管理(マスクの調整・データ確認)も丁寧に行っています
生活習慣の改善
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減量(体重の5〜10%減でも改善効果があります)
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飲酒の制限、禁煙
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睡眠の姿勢改善(横向きに寝るなど)
その他の治療
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歯科的アプローチ(マウスピース装着)・・軽症例に
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鼻の病気の治療や手術・・鼻中隔弯曲症などがある場合
睡眠時無呼吸症候群のよくある質問
Q1. SASは治りますか?
A1. 一部の軽症の方では、体重減少や生活習慣の改善で改善が見込めます。ただし、多くの場合は持続的な治療(CPAPなど)が必要です。治療を継続することで、日常生活の質が大きく向上し、合併症のリスクも下げられます。
Q2. CPAPの装着が不安です。
A2. 初めは違和感があることもありますが、多くの方が1〜2週間で慣れてきます。当院では、個別の装着指導・定期的なフォローで安心して治療を続けていただけます。
Q3. 費用はどれくらいかかりますか?
A3. CPAP療法は、保険診療で行われます。3割負担の場合、月額5,000〜6,000円前後となることが多いです。詳しくは診察時にご案内いたします。
院長より
当院では、睡眠時無呼吸症候群に対して、患者さんのご負担が少なく、気軽に始められる在宅での検査体制を整えています。ご自宅で検査を受けられ、結果は私たちが責任を持って評価し、必要な方にはCPAP治療へスムーズに移行できるようにしています。
いびきや眠気に悩まされている方、またはご家族に「寝ているとき呼吸が止まっている」と言われたことがある方は、放置せず一度ご相談ください。生活の質(QOL)の向上はもちろん、心疾患や脳卒中などのリスクも抑えることができます。
患者さんの生活に寄り添った診療を心がけていますので、どうぞお気軽にお声かけください。
